いじめ発生時の対応 認知後の流れを解説!

「いじめ」は、現代の学校現場が抱える大きな問題の一つです。時に自殺や不登校といった重大事態の要因になりうるため、学校や教員側の対応には迅速さと的確さが求められます。今回は、いじめの認知から対処までの流れを解説していきます。

いじめの定義

いじめを正しく認知するために、まずはその定義についておさらいしましょう。平成25年に施行されたいじめ防止対策推進法の第二条によると、

「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

と定義されています。

出典:”https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1406848.htm”.いじめ防止対策推進法(平成25年9月28日).文部科学省

この法律の制定前は、いじめの定義について継続的な被害を受けている」「被害の程度が深刻である」ことなどを条件づけていた時代もありましたが、現在は

  • 程度を問わず、行為の受け手側が苦痛を感じている
  • 一時的であっても行為を受けた

といった事実があれば、「いじめ」と見なされます。

また文科省は現在のいじめの定義について、

「いじめ」の中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められ、早期に警察 に相談することが重要なものや、児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生 じるような、直ちに警察に通報することが必要なものが含まれる。

とも示しています。

出典:

“https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/26/1400030_003.pdf”.いじめの定義.文部科学省

決して「子ども同士のけんかや悪ふざけ」で済まさず、必要な際には警察などの外部機関と連携するなどの対応を取らなくてはなりません。

いじめへの対応

いじめ対応の大まかな流れについては、「生徒指導提要」や「いじめの防止等のための基本的な方針」などでまとめられています。これらを元に、対応の流れを一部紹介して行きます。

認知からの流れ

いじめの主な発見ルートは「アンケート調査」「本人からの訴え」「当該保護者からの訴え」「担任による発見」などです。認知の経緯は様々ですが、認知後の対応としては、

  1. 事実の確認・・・第一に被害者に事実を確認。その後、周囲の生徒にも話を聞きながら、加害者から話を聞く。
  2. 被害者の保護・・・何よりも最優先して被害者の心のケアを行い、不登校・自傷行為・仕返し行動などの二次的な問題を防ぐ。
  3. 被害者のニーズの確認・・・具体的な支援策を被害者本人や保護者に選択してもらう。
  4. いじめ加害者と被害者の関係修復・・・加害者が自ら罪悪感を抱き、関係修復に向かうよう働きかける。この時、加害者の保護者にも協力を要請する。
  5. いじめの解消の確認・・・いじめ行為が止んでいること、被害者が心身の苦痛を感じていないことを断続的に確認する。

この1〜5の流れが基本となります。

出典:”https://www.mext.go.jp/content/20221206-mxt_jidou02-000024699-001.pdf”.生徒指導提要(令和4年12月).文部科学省.pp120-139

重大事態が発生した場合の対処

残念ながら、いじめによって「自殺(未遂)」「心身、金品等への重大な被害」「一定期間の不登校」といった重大事態が発生するケースも少なくありません。このような事態が発生した際、学校は各自治体の教育委員会等に速やかに報告し、実態を調査しなければなりません。これはいじめ防止対策推進法の第二十八条で定められています。

また第二十二条では、各学校に対し、複数の教職員や心理・福祉の専門家(学校医・スクールカウンセラー等)、その他の関係者から構成される「いじめの防止等の対策のための組織」を置くことを義務付けています。重大事態が発生した際には、この組織等の団体が母体となって調査を進めることになります。

出典:”https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/03/19/1304156_02_2_1.pdf”.いじめの防止等のための基本的な方針(最終改訂平成29年3月14日).文部科学省.pp 31-41

1.いじめの調査

いじめの調査は、被害者や情報を提供した生徒のプライバシーを守りながら、公平性・中立性を保って実施されなくてはなりません。被害者本人から実態を聞きつつ、アンケート等で在校生や教職員らから幅広く情報を集めることになります。

調査すべき内容は、「誰が関与しているのか」「いじめが行われた場所、時期」「いじめの内容」「いじめを生んだ背景」など。被害者本人からの聞き取りが困難である場合は、当該保護者の要望を尊重しながらのアンケート調査がメインとなります。

2.調査結果の報告

調査によっていじめの事実を確認し、実態をある程度把握できた後は、その調査結果や対応の進捗状況等を、国立学校であれば文部科学大臣、公立学校や私立学校であれば自治体の首長などに速やかに報告します。再発防止のために必要と見なされれば、再調査が行われることもあります。

被害者とその保護者への情報提供も逐一行われなくてはなりません。情報を提供する適切な時期や方法はケースごとに異なるため、調査の母体となる組織の判断に合わせます。

保護者と話し合う際に注意すべきポイントは、

  • 被害者生徒を守るという誠意を伝える
  • 適切なタイミングを見極められるまで、加害者側への連絡を待ってもらう
  • 即答できない質問には答えない、安易な推測で伝えない など。

調査で得られた情報が当該校にとって不都合な内容であったとしても、結果を重んじ、積極的に情報提供しなくてはなりません。加害者の個人情報保護等を盾に説明を怠るようなことは、決してあってはなりません。

チームで「素早く」「的確な」対応を

いじめは、正しく「認知」すること、そして事態を悪化させないためにも「速やかに」対応をしていくことが大切です。そして、いじめが起こった学級の担任が一人で問題を抱え込まず、校内の他の教員や、保護者、地域のさまざまな関係団体と連携して、チームで対応しなければなりません。

いじめは、被害者の「人権」や、時には「生命」を脅かしかねない重大な問題です。対応の迅速さが求められる一方で、一度の判断のミスが当該生徒の将来を絶ってしまう恐れもあります。法律やガイドラインを元に慎重に方針を決め、適切に対応に当たってください。

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