子どもたちのより良い成長のために!保健室登校とは?

様々な事情により、教室に入ることができなくなってしまった子どもたちのその後の選択肢の一つに「保健室登校」があります。
保健室登校とは具体的にどのようなことができるのでしょうか。また子どもたちのより良い成長のために、養護教諭や担任として対応していく上でのポイントを紹介していきます。

保健室登校とは

保健室登校とは、学校へ登校した際に保健室を居場所として過ごすことです。
保健室に付随する相談室等で過ごす場合もあり、「別室登校」と呼ばれることもあります。
学校へ登校する意欲はあっても教室で過ごすことに不安感や緊張感がある等、何かしらのハードルがある場合に利用されることが多いです。

保健室登校のメリット

保健室登校を行う上でのメリットを3つ紹介します。

①出席が認められる

 基本的に学校は、教室に入り授業を受けることで、出席を認めてもらうことができます。
しかし、教室に入ることができない子どもたちはどんなに学校へ行きたいと思っていても出席を認めてもらうことができません。
そこで養護教諭が常駐する保健室に登校することで出席を認めてもらいます。

②人との繋がりをつくる

教室に入れなくなってしまった子どもたちが最初にとる多くの手段は家庭で過ごすことです。
家庭で十分な休養をとる時間も重要ですが、エネルギーが溜まってきたら外へ出て人とのつながりをつくることも大切な時間になります。
保健室登校だと、家庭にいるよりも先生や他の生徒との距離も近く、関わる機会も増えていきます。そこから新たな関係ができ、教室へ向かう意欲が湧いてくることもあるのです。

③規則正しい生活を維持する

子どもにとって朝起きて決まった時間に登校をするということは、生活習慣を整えて、さらには体力をつける効果も期待できます。
学校には時間割があるので、休み時間と授業時間のメリハリをつけることもできます。
教室へ登校できなくなった際にフリースクールや適応指導教室等への通学を勧めることがありますが、どこかへ通うということにはこんなメリットがあるのです。

保健室登校のデメリット

保健室登校はメリットばかりではありません。ここでは保健室登校のデメリットについて紹介します。

①出席が認められない場合がある

保健室登校のメリットで出席が認められると紹介しましたが、実は必ずしも出席が認められるわけではありません。
実は出席となるかどうかは、各学校の校長先生の判断によって決められているからです。
基本的には義務教育である小中学校は出席と認めてもらえる傾向があります。
しかし、高等学校は対面で授業に出席することで単位を認定しているため、保健室で勉強をしていても出席と認めてもらえないことが多いです。
義務教育でも私学だと学校によって認められない場合があります。保健室登校を検討する際は出席と認められるかどうかをしっかりと子どもたちに伝え、安心して保健室に登校ができるようにしましょう。

②必ずしも安心空間を維持できるわけではない

保健室では様々な子どもたちや先生と関わることができるメリットがありました。しかし、それは場合によってはデメリットになる可能性があります。
もしいじめ等が原因で保健室登校になってしまった子どもがいるときに、加害者側の子どもが来室したらどうなるでしょうか。
せっかく安心して登校できる場所を見つけたと思っていた子どもが不安定になってしまいます。
保健室は基本的に誰でも利用することができる場所です。ケガ人が出たときはそちらの対応が優先になりますし、健康診断がある場合は保健室の利用ができなくなってしまいます。風邪などの感染症が流行する時期は、保健室登校の子どもも感染してしまう危険性があります。
保健室は必ずしも安心空間が維持された場所ではないのです。

③クラスと距離ができる可能性がある

保健室登校は、学校によっては他クラスの子どもたち含めて複数人を預かっている場合があります。その中で関係ができてしまい、自分のクラスの子たちとの距離が遠くなってしまう可能性があるのです。新しい友達ができることはとても良いことです。しかし、保健室の居心地の良さに慣れてしまい、教室により行きづらくなってしまう子どもたちがいることも事実です。

対応のポイント

保健室登校のデメリットで「保健室は必ずしも安心空間を維持できる場所ではない」とお伝えしました。保健室登校はゴールではなく一時的な居場所、通過点として考える必要があります。
そのためには本人にとって、より良い選択肢を選ぶことができるよう対応していく必要があります。
保健室登校を受け入れる上でどのようなことに気をつけたら良いのでしょうか。

スモールステップで対応する

スモールステップとは、目標を細かく分けて少しずつ簡単なことからチャレンジし達成を目指していくことです。
段階に分けていることで子どもたちもチャレンジがしやすいですし、教員側も声掛けや取り組みが行いやすいメリットがあります。子どもたちに「できた」という達成感をもたせる機会が多くなるため自己肯定感をはぐくみ、新しいことにチャレンジする意欲を持たせることができます。
また、子どもたちのつまずきや苦手部分の把握にもつながるのです。

子どもの自己肯定感を育む

保健室登校の子どもたちは教室に通うことができなくなったという気持ちやそれまでの経験により、自己肯定感が低下している可能性があります。
自己肯定感が低い子どもたちはやる気が低下している状況です。
子どもたちの良いところを見つけ褒める、スモールステップで少しずつ色々なことに挑戦することで、自己肯定感を少しずつ伸ばしていくことができます。
そこから「教室に行ってみよう」、「新しいことに挑戦してみよう」という意欲につながってくるのです。

担任や他の教員との連携

保健室登校を受け入れる際は、養護教諭1人で抱え込むのではなく担任を始めとした他の教員と連携をとることがとても重要です。
例えば保健室で勉強をする際、今クラスでどのような内容の勉強をしているか確認する必要があります。HRなどで行事の打ち合わせをしたり、レクレーションを行ったりする場合は教室に戻るきっかけにつながるので、子どもたちが参加しやすい方法を検討する必要があります。
また、子どもたちが所属している部活の顧問やスクールカウンセラーなど子どもたちが心を開きやすい存在の人と連携をとること、場合によっては管理職との連携も重要です。
クラスとの距離を縮めるために、そして子どもたちが保健室以外の選択肢も検討できる機会を持てるように対応を行っていく必要があります。

保健室登校の代わりとなる別室登校

愛知県岡崎市では「F組」と呼ばれる校内フリースクールを公立中学校に設置しています。現在は一部の学校のみですが、いずれ市内の全中学校に開設する予定とのことです。
学校内にフリースクールを設置することで、保健室登校におけるデメリットは解消されると考えられます。こういった取り組みは全国に広がりつつあります。

まとめ

文部科学省がおこなった調査によると、令和3年度の不登校の小中学生は過去最多の24万人になりました。もはや学校内だけに居場所を求めることは時代に合っていないのかもしれません。
しかしながら保健室登校は学校に通えない子どもたちの大切な居場所となっているのも事実です。色々な教員の目で子どもたちを見守り、より良い成長につなげていきましょう。

参考文献:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査,文部科学省,(参照2022-12-14)

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