【校長インタビュー#12】玉川聖学院中等部・高等部 中高等部長(校長職)の櫛田真実先生へインタビュー!

今回はキリスト教系女子校の玉川聖学院中等部・高等部(東京都)で中高等部長(校長職)を務める櫛田真実先生にインタビューさせて頂きました。元々は教員志望ではなかったという櫛田先生の裏話や、地方の公立高校での豊富なキャリア、玉川聖学院ならではの特色など、さまざまなお話をお伺いしました。

教員志望ではなかったという櫛田先生

ー櫛田先生は長年、数学の先生をされていたそうですね。

櫛田先生(以下敬称略):元々数学が好きだったんです。受験生の頃は神戸大学理学部数学科を目指していて、教員志望ではありませんでした。

当時、国公立大学の入学試験は前期後期が一緒になっていて、一発勝負だったんです。しかし、共通一次試験(現在の共通テスト)の数学の試験中、マークシートの表裏を間違えて答えを書いてしまって…慌てて書き直している最中に、試験終了になってしまったんです(笑)。ボーダーが10点ほど低く、共通する授業も多かったことから、志望学部を教育学部数学科に変更しました。

ー理学部から教育学部に変わりましたが、なぜ大学で数学を勉強しようと思ったのですか。

櫛田:人間が積み上げたものが真理に近づいていくー。そういう魅力を数学に感じていたのが理由です。同じ理系でも、理科の真理は時代ごとの観測機器の発達によって変わってきます。このため、過去に証明された仮説は、時代が変わると通用しなくなることがあります。しかし、数学で一度証明されたものはずっと証明されたままで、真理に近づいていけるのです。

ー元々目指していなかったという教員を目指すようになったきっかけは。

櫛田:とどめを刺されたのは教育実習ですね。実際に教育実習を経験してみると、中には自分が教員に向いていないと感じる人もいますが、私は教員を楽しいと感じました。

学生時代の生活はほとんど自分のアルバイトで賄っていました。スイミングスクールのコーチや塾講師など様々な仕事に就きました。こうした経験を通して、人を育てることの素晴らしさに触れたことも教員を志した理由の一つですね。

ー教員を志す決定打となった教育実習ではどのようなことが心に残りましたか。

教育実習では中学1年生を受け持ち、トランプを使って正の数・負の数を教えました。指導教官の導入がとても上手で、上手な土台の上で授業させてもらったので教科指導での苦労はありませんでした。研究授業で、理科の先生にけちょんけちょんにやられましたが、指導教官から「数学的な論理に基づいた授業だった」とフォローしてもらえましたしね。

生徒たちに関しては、大学の附属中学校だったため、妙に教育実習に慣れ、少し擦れたような子たちもいました。しかし、5週間という長めの実習期間を共に過ごし、バレーボールのクラスマッチなどでも交流を深め、心が通じ合えたかなと思えます。そういった点で、数学に限らず、「教員全体」としてのイメージが強烈に残った実習でした。

ー教科指導だけでなく、生徒との関わりが教員になる大きなきっかけになったのですね。

櫛田:私自身が元々、「勉強!勉強!」というタイプではなく、通っていた高校も部活や行事など、何事にも一生懸命な学校でした。勉強だけでなく、トータルで先生たちに関わってもらってきました。数学の勉強がしたくて大学に入り、教科指導が自分の中でメインになっていましたが、教育実習を通して改めて教員という仕事の魅力に気付かされました。

また、高校時代の数学教員を思い返すと、「板書はめちゃくちゃだが、理論をしっかり教えてくれる先生」「説明はいまいちだが、板書の理論に隙がない先生」がいて、そういった恩師たちから数学の魅力を伝えられました。教科指導に関しては中学数学の内容では物足りないと感じたため、高校教員の道を選びました。

公立高校から私立学校へ

ー公立高校では12年もの間教えていたそうですね。

櫛田:最初の1年は大阪府、2年目からは地元の香川県の公立高校で教えていました。香川で最初に赴任した高校は教育困難校で、トイレでタバコの取り締まりなんかもしていました。教員のチームワークは良かったですね。次に転勤した高校には選抜クラスがあり、教科の補習授業なども行いました。

ー公立高校時代に印象に残っている出来事はありますか。

櫛田:1997年に、文部省(当時)が初めて主催した若手教員の米国派遣に参加しました。全国から教員が集められ、私は当時勤務していた高校の校長から声を掛けられました。

1週間の事前研修ののち、9月から3ヶ月間、コロラド州に送られました。現地の教員の家にホームステイしながら、高校や図書館、虐待を受けた子どもたちが暮らす寮などを視察したほか、障害者教育やチャータースクールなど、当時の先進的な教育を見学させてもらいました。

日本から派遣された教員同士で、各県の教育についてや、日本の教育の将来についても夜な夜な話し合いましたね。

ー香川県の公立高校の次世代のリーダーとして期待されて派遣されたのですね。ところが、どうして都内の私立学校に移られたのでしょうか。

櫛田:私は元々クリスチャンで、命や性をはじめ、あらゆる問題に対して聖書に基づく価値観を持っています。「何のためにいい大学を目指すのか」「何のために勉強するのか」といった点を伝える教育ができているのか自問自答し、聖書の教えも伝えていきたいという思いが芽生えました。

公立学校では生徒や同僚に恵まれましたが、宗教的なことを教えるのには限界があると感じ、私立学校を選びました。

ーキリスト教系の学校がたくさんある中で、玉川聖学院を選ばれた経緯を教えてください。

櫛田:キリスト教学校教育同盟という団体の主事さんにいくつか高校を紹介してもらったのですが、女子校だけは行くまいと思っていました(笑)。男性の多い世界しか知らなかったため、当時はどう振る舞えばいいのか想像がつかなかったんです。なので、最初に紹介された女子校は断りました。

共学か男子校の採用試験を受けようと思っていたのですが、ちょうどコロラド派遣の時期に重なりまして。神様に「こだわりを捨てなさい」と言われた気がしました。長期研修後、すぐに転職するのも気が引け、2年待って紹介された玉川聖学院に移りました。

できる子には厳しく 学び続けることが大切

ー玉川聖学院に移ってきて、環境がガラッと変わったのではないでしょうか。

櫛田:変わりましたね。まず、田舎と都会で文化が違いますし、満員電車での通勤に苦労しました。そして、共学から女子校という違いもあります。公立と私立という点でも、異動のある公立は配属先でやり過ごせばいいという考え方もできますしね。

ー特にギャップを感じたことや、苦労した点はありますか。

櫛田:中高一貫校で行事も多く、各学年が積み上げたものというのが存在します。このため当初は、私のような途中で入ってきた「異物」に対して反抗されることもありました。しかし、中学1年生から受け持った場合、中学2、3年生の思春期に反抗したような生徒が、高校で戻ってきてくれるんですよね。これが中高一貫のいいところです。

また当初は、生徒たちが「簡単に諦めてしまうこと」を悔しく思いました。早々に推薦で進路を決めたがる傾向があり、実力はあるのに、可能性を早々に否定してしまっているように思えたんです。そういった点で、初めはこの学校の文化に馴染めていなかったかなと思います。

ー環境が大きく変わってもなお、櫛田先生が教員としてずっと大切にしてきたことは何でしょうか。

櫛田:教育の質というのは、私たちに与えられた生徒をどれだけ責任持って育てていくかだと思っています。偏差値で競争させるのではなく、生徒自身に「あなたはかけがえのない存在だ」「使命に答えられるだけの力をつけるためにベストを尽くしなさい」ということを伝えます。

私は能力のある子には、特に厳しいんです。満足しないでほしいと思っているし、続けて勉強するよう訴えかけています。

生徒を本気にさせる体験を

ー玉川聖学院ならではの特色についても教えてください。

櫛田:キリスト教系の学校なので、礼拝が毎日あります。神様の前でへりくだることによって、「自分の信念を曲げず、生徒に好かれるよりも信頼される教員になろう」と毎回考えさせられます。

クリスマスや感謝祭のほか、聖書について学ぶ「バイブルキャンプ」といった宗教的な行事も盛んです。中学生は毎週日曜日の朝に教会学校に行くことになっていて、高校生は年間6〜7回ほど大人の礼拝に参加してもらいます。

ーボランティア活動にも熱心に取り組んでいるとお聞きしています。

櫛田:東日本大震災を機に、毎年夏と冬に岩手県にボランティアに行くようになりました。2012年から始まり、今年で18回目です。女子学生には瓦礫やヘドロの撤去などの力仕事は難しいですが、手作りのお菓子を配ったり、手話や歌で交流したりしています。

被災者の方たち同士だと互いに遠慮してしまい、被災当時のことについて会話ができづらいときも被災の現実を知らない女子校生たちが東京からやって来ると、当時のことを話してくれるみたいなんです。そこから被災者の方々同士でも話が広がっていき、生徒たちが橋渡し役になっています。自然体で話すことで人と人を繋ぐことのできる生徒たちのエネルギーはすごいと感じます。

中には「推薦のため」という下心があって、このような体験に参加する生徒もいます。けれど、参加するきっかけは下心であってもいいと思っています。教員側は生徒たちに、体験に対する自分たちの“本気”を見せ、そして生徒たち自身を“本気”にさせることが大切だと思っています。

求める人材は「生徒と共に学び続ける教員」

ー近頃は教員のブラック勤務が問題になっていますが、玉川聖学院では何らかの取り組みを行っていますか。

櫛田:教員のブラック勤務が宣伝されすぎてしまい、生きがいややりがいが評価されなくなっているのが残念ですね。

本校は日曜日はお休みなので、部活動はありません。日曜日は教会に行ってくださいということですね。部活動は月〜土曜日の中で、最大で週4日活動しています。今年で創立72年ですが、不思議なことに、文科省の進める部活動の活動頻度が、本校のスタイルに近づいている気がします。練習時間は限られていますが、今年は中等部新体操部が関東大会出場、ダンス部が神戸の全国大会で2年連続の決戦出場と好成績を納めています。

ー教員とって優しい労働環境ですが、休日の補習などはないのでしょうか。

櫛田:中学生は定期考査で下位15%に入ると、土曜日に補習を行います。指導するのは、本校を卒業した大学生たちです。勉強の仕方や、先生の出題の癖の他に、先生たちの変なあだ名を教えられることもあります(笑)。生徒の気持ちを分かってくれています。

ー卒業生も協力していて、すごくいい仕組みになっていますね。最後になりますが、玉川聖学院ではどのような教員を求めているのか教えてください。

櫛田:キリスト教への信仰を強要はしませんが、学校の姿勢に共感した上で教育して頂きたいです。クリスチャンの先生であれば2ヶ月に1回、聖書について生徒たちに話をしますが、クリスチャンではない先生には順番が回ってきません。

しかし、終礼の時に、各クラスで聖書の御言葉を読み、生徒と共に自分自身を振り返って話す機会があります。この時は教員も、人間としての弱さをさらけ出したり、一人の人間としてどうであるかを話したりします。終礼があるからこそ、生徒たちが「先生も一人の人間なんだ」と安心できるのです。

そして、何よりも求めているのは、「自分は既に分かっている」という人ではなく、「自分は発展途上である」と自覚している人です。生徒と共に学んでいこうという意欲のある方、学び方を教えられる方に、ぜひ来て頂きたいです。

ー本日はありがとうございました。

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edulo編集部

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