若手教員や教員志望者の方々の中には「これからどのようなキャリアを歩むことができるのだろう」「数年後にはこんな教員になりたい」など、キャリアビジョンやキャリアデザインについて真剣に考えている方も多いのではないでしょうか。
今回は、教員なら知っておきたい教員のキャリアパスやキャリアプランについてお教えします。
キャリアデザインは、将来どのような働き方をしたいのか、目標を明確にしたうえで行動にすることを指します。
教員の様々なキャリアパスを知っておくことにより、自分の理想の教員像から現在の状況までを逆算していくことで、今あなたがとるべき行動や課題も見えてくるはずです。
教員志望者に知っていてほしい著名な教育者は、『教員志望に知っていてほしい著名な教育者! 日本の教育に影響を与えた7名とは?』をご覧ください
教員に向いている人の特徴は、『教員に向いている人の性格や求められている資質とは? 教員志望者必見!』をご覧ください
ライター

emikyon
・元公立学校教員
・教育委員会にて勤務
・eduloライター歴2年
王道コースは一般職→主任→教務主任
教員人生として王道なのが、一般教諭からキャリアをスタートして、学年主任、教務主任になるルートです。
教務主任までは、教諭扱いのため特別な試験などはありません。最初のうちは校務分掌も少ないですが、教科主任や「生徒指導主任」「進路指導主任(中学校)」「現職教育主任」などの校内の重要な役職を経て教務主任になります。
30代や40代で、通過点の要職(主任)を任されている方は、将来的に教務主任から管理職へキャリアアップしていく可能性が期待できます。
教務主任を経て任用試験を受け教頭・校長へ
学校の教頭(副校長)や校長になるためには、各自治体が実施する任用試験を受け、合格する必要があります。
任用試験を受けるためには条件(例 教頭試験の場合、教務主任や主幹教諭の経験3年以上など)があり、条件を満たすと任用試験を受けることができます。
任用試験では、教育法規や組織マネジメントなど、管理職としての資質能力を問われるような試験問題が出題され、合格すると合格者として登録されます。
地域とのつながりや学校の役割を学ぶ
あえていつも働いている場所から離れた勤務地を希望するのも一つの選択肢です。
自治体で希望して空きがあれば行くことができるのがへき地や離島勤務です。島の多い都道府県では、毎年のようにへき地・離島勤務者の希望調査があります。へき地や離島勤務の場合、手当が少し上乗せされるため、給与もよくなりますよ。
また、複式学級の担任や教育行政に関わる部分まで教員一人が担わないと学校運営ができないことも多く、通常の勤務では分からない地域とのつながりや学校の役割、お金の管理などを学ぶことができますよ。
自分のキャリアを個性的なものにしてスキルアップする
ここまでは、自発的に動かなくてもある程度、経験や実績で行われる一般的なキャリアアップについて紹介してきました。
ここからは、国の公募や自分自身が希望して教員としてキャリアアップしたい方におすすめのキャリアパスをを紹介します。
教育の研究をするために付属学校へ転勤
1つ目が大学の付属学校への転勤です。教育を発展させるためには「教育研究」が必要です。この研究を担うのが大学が運営する付属学校です。
例を挙げると筑波大学では、付属の小学校から中学校、幼稚園の付属をもっており、最先端の教育研究をすることができます。自分で実践してみたい教科指導がある、教育のスペシャリストとしてのスキルを身に付けたいという人にとっておすすめです。
付属学校での勤務年数は概ね6年程度が基本になり、任期満了をもって元々勤務していた自治体に戻ることになります。
海外の日本人学校勤務
2つ目は、海外での日本人学校勤務です。海外に住む日本の子女に日本と同じ教育をする場所として設けられているのが日本人学校(在外教育施設)です。
日本人学校で勤務している教員も全国から公募によって集められており、各自治体が実施する試験と文部科学省が実施する試験を受けて派遣されます。
派遣される国は選ぶことができず、その時の教員のバランスによって行先が決まりますが、日本人学校の規模の都合上、圧倒的に中国などの東アジア、バンコクやベトナムなどの東南アジアにある日本人学校に派遣される可能性が高いと言われています。
また、赴任期間は基本2年で、勤務実績等に応じて最長4年まで可能です。赴任期間中は、長期出張中の扱いになり、日本での給与はそのまま出て、そこに在外赴任手当が上乗せされて支給されることになります。
休職して発展途上国の支援をする「青年海外協力隊」
日本人学校と同じ海外勤務でありながら、待遇や勤務環境が全く異なるのが「青年海外協力隊」です。
独立行政法人国際協力機構(JICA)が派遣する国際ボランティアとして世界各国に行き、発展のための活動をします。
学校の建設や教育環境が整っていない場所での学習指導などさまざまな役割を果たします。JICAとして派遣されている間は休職扱いとなり、派遣終了後に復職することができます。
日本人学校が日本企業の多い首都や大都市にあるところに比べて、青年海外協力隊の場合、インフラも整っていないような地域や国への派遣となります。
仕事の内容も、海外で日本と同じ教育を受けることができるように整っている日本人学校勤務と学校環境さえ整っていない地域での勤務に大きな違いがあることを知っておきましょう。
教育行政に携わる「教育委員会(事務局)」勤務
同じ日本の中でも教育の仕事が大きく変わってしまうのが教育委員会(事務局)勤務です。
教育委員会での勤務は希望制というよりも、推薦や指名で決まることが多いですが、市役所の中にある「学校教育課」で指導主事という立場で仕事をすることになります。
学校教育課は、学校の先生方だけでできている組織ではなく学校事務、人事、庶務、経理などさまざまな市役所の人と一緒に仕事をする「まさに行政の仕事」をすることがメインです。
例えば、予算を立てて議会で承認を得なければ、会計年度の学校職員を雇うことはできませんし、学校の備品を購入することもできません。
学校で問題が起きたときには、第三者として間に入り問題を解決する橋渡しをしたり、学校教材の承認をします。また、大きな自治体であれば教員研修を担っている教育委員会もあります。なかなか誰でも経験することができる立場ではなく、一度経験すると教員人生において、これほどいろいろなことを学べる場所ではないと経験者としてお伝えしておきます。
教育委員会の活動や役割についてより詳しく知りたい方は「教育委員会の役割や仕事内容とは?教育の専門家指導主事についても解説!」をご覧ください。
異校種や特別支援学校などへの教員交流に参加する
ほかにも教員になってから自身でキャリアアップをする方法はいくつかあります。
・異校種への配置転換希望(小学校から中学校や高校へ異動する、またはその逆)
・特別支援学校への人事交流に参加
・休業制度を利用して教職大学院への入学
など
どれも教育公務員としての身分を有したまま(長期出張扱いや一時休職扱い)でできる方法ばかりです。
個性を生かしたキャリア形成が教員にも必要
教員採用試験を乗り越えて満足してしまい、自分の中でキャリアアップを止めてしまう若手を多く見てきました。
しかし、教育基本法に「教員は絶えず研究と修養に励み」と示されているように私たち教員は学び続けなければいけません。
記事を読んでみてあなたの理想とするの理想のキャリアプランは見つかりましたか。これからどんなキャリアを積み上げていきたいのか考えてみてくださいね。