教員とは、子どもたちに学習内容を習得させるだけでなく、その心身や社会で生きていくため必要な能力を養わせる役割を持つ重要な仕事です。その役割の多さから、若手の教員や教員を目指している方の中には、自分自身が教員に向いているのかどうか心配になる方もいるのではないでしょうか。
今回は、そんな方向けに「教員」の仕事内容と、どのような人物が教員に向いているのか紹介していきます。この文章を読んで「自分は教員向いているかも・・・」と思い、教職の道を目指す人が「一人でも現れたら」筆者としては、うれしい限りです。
ライター
emikyon
・元公立学校教員
・教育委員会にて勤務
・eduloライター歴2年
「子どもが好き」「成長を見るのが好き」
はじめに大前提として教員に向いている人は、子ども好きという点です。関わる時間が多いのは子どもたちなので、「子どもが嫌い」「人と接するのが苦手」と思っている人は、正直教職には向いていないかもしれません。子どもたちに新しい学びを教え、成長する姿を見てやりがいや喜びを感じることができる人が向いているでしょう。
また、前向きな性格も教員には重要な要素です。子どもたちは非常に敏感なので、教員の怒りや悲しみなどのネガティブな気持ちも敏感に感じ取ってしまいます。前向きに失敗を恐れずに取り組んでいく姿勢、間違っていても原因を子どもに確認させ、次は間違わないようにするサポートができるような資質を持っている人は教員向きですよ。
教員はマニュアル化できない! 柔軟な対応力が必要
野村総研が2015年に実施した調査により「日本の労働人口の49%が人工知能やロボットなどで代替可能になる」と発表されました。AIが導入されることで「将来的になくなる仕事」として鉄道の運転士や銀行員などが挙がる中「教員」という言葉はなかなか出てきません。なぜ、教職はAIがとって代わりにくいのでしょうか。
その理由の1つが教員の仕事の内容はマニュアル化できないという点です。普段の授業、いじめ対策、不登校対策にアレルギー対応と教員の仕事は、子ども一人一人に合わせておこなうことが多いです。文部科学省も「個別最適な学び」と大々的に言っているように、マニュアル化して一斉に指導するというのは今の教育方針にも反するところもあります。
つまり、教員に向いている人は、マニュアル化できない仕事を自分である程度判断し、責任をもって行うことができる能力が求められます。このあたりは、乗客の安全を守り、確実に運転するためにマニュアル化されている鉄道の運転士の仕事とは大きく違うところかもしれません。
同じ3年生を担任しても、そのときのクラスの雰囲気や人数、学校の方針などによって授業のやり方を変えなければ、個別最適な学びをすることはできません。不登校の児童生徒に対する対応も、一人一人の不登校要因が違うので同一対応は不可能です。このようにマニュアル化できない仕事ができるというのは「教員の仕事の魅力」でもあります。子どもと一緒に問題解決をしていく、問題の大きさによっては他の教員や家庭、地域と連携しながら解決することも起きます。
同じ仕事を繰り返してしまうと飽きてしまうような性格や柔軟な発想力を持ち、それをを活かしてみたいという人は教員向きと言えます。
「子どもが主語」になる学びや活動ができる人
教員というと「熱血」や「子どもを引っ張る」というイメージを持っている人がいるかもしれませんが、それは過去の話です。今の教員採用試験の面接試験においても、「コミュニケーションスキル」や「相互理解」に関する質問をするほうが多くなっています。
学習活動や委員会活動においても、求められているのは「主体的・対話的で深い学び」であり、この言葉の主語は「子ども」です。教員には、子どもが主語になる活動を促すことができる資質が求められます。特に、教員採用試験はコミュニケーション能力が重視されていることからも国や県がどんな人物像を教員に求めているのかが分かります。「ティーチング(子どもに教える)」よりも「コーチング(子どもの学びに伴走する)」ことが重要視されてきていることからも、一緒に何かを作り上げていることが好きという人は教員向きと言えるかもしれません。
一つのことに集中するのが好きな人は向いていないかも
頑張って教員になったのに、さまざまな原因から休職に追い込まれてしまう人もたくさんいます。休職をする教員の共通点としてよく聞くのは、一つの物事に集中しすぎてしまうことです。
教員の仕事は、授業以外に事務作業から生徒指導、保護者対応と多岐に渡ります。1つ1つの仕事を丁寧にしっかりとやりたいという気持ちも分かりますが、それではどうしても追いつかなくなります。複数の仕事を同時にこなすマルチタスクは日常茶飯事ですし、仕事をしている最中に、最優先の仕事が飛び込んでくることもよくあることです。つまり、研究者のように1つのことを追求していくよりも、広く周りを見て状況を確認し、優先順位をつけて仕事をする必要があります。
このようなマルチタスクは仕事をしていくうちに覚えていくので、これから教員を目指す人は、今できなくても心配する必要はありません。ただ、これから教職を考えている人は、自分の性格をよく考えて、仕事選びをすることも大切になります。
教員志望者は必ず最新の教育動向をチェックしておこう!
教員の仕事は、文部科学省から下りてくる学習指導要領や生徒指導提要などをベースに仕事をしていきます。これは日々アップデートされてくるので、常に新しいことを知りたいという貪欲さが必要になります。例えば、小学校3年生を担任しているのに、今の3年生がどんなゲームが好きで、どんな遊びをしているのかという「日常」を知らないと子どもを理解することはできません。
近年、ICT機器も導入され、さまざまなアプリケーションを活用した授業も行われています。学習のやり方も昭和や平成で行われていた「教師主導」の授業から「子ども主導」の学びへと変化してきました。こうした新しいものが好きで、自分に関係あるものだけでなく、子どもや社会に関係のある最新情報を積極的に取り入れていきたいという人は、子どもからも一目置かれる存在になるでしょう。
子どもが夢を見れる指導をしよう!
教員に向いているのは、子どものために情熱をもって仕事ができる人です。機械を相手にする仕事ではないので、全てがマニュアル化されているわけではなく、相手を見ながら考えて判断する場面が多くあります。よく言えば、6年生を2年連続で持ったとしても「同じ6年生ではない」ということです。(筆者は4年連続6年生の担任の経験あり)毎年違うことが起きますし、同じ授業をやっていても反応が違います。そんな仕事がしてみたいという人は教員に向いていると言えるでしょう。最終的には子どもが将来(夢)に向かっていくお手伝いをします。どんな成長をしていくのか、将来どんな子になるのか、そんな子どもたちの可能性を少しでも伸ばすことができるのが教員の仕事の魅力です。
参考文献:日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に,https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf, 野村総研(参照 2024-10-24)
参考文献:「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(答申),https://www.mext.go.jp/content/20240827-mxt_zaimu-000037716_01.pdf,文部科学省,(参照 2024-10-24)