ノートと鉛筆

【探求】生徒たちのノート指導について

当たり前の事を当たり前に実行するのが難しい

長年教壇に立っている方は、様々な児童・生徒達にも出会い、その分様々な経験を積んでいます。そしてそのような方が痛感したのは『当たり前が大切、でもそれが難しい』ということです。
学校教育雑誌やインターネット上には、「あなたもこれで素晴らしい授業ができる」といった情報が溢れかえっています。中にはカリスマ的人気を誇り全国規模の組織ができているものもあります。
工夫をこらしてそれを活用する、華々い活躍をする、誰しもが憧れる教員になりたい。
様々な理想があることはわかります。

しかし、その前に必ず『当たり前』をできるようにならなくてはいけません。ですが、『当たり前の事を当たり前に実行する』事は難しいのです。今回はその一例として子ども達のノート指導について書かせていただきます。

ノートは多くを語る

授業でのエースといえば、積極的に発言し、その内容も優れている生徒が当てはまるでしょう。こういった生徒達は大人の評価が高いですし、研究授業後の研究協議でも話題になります。しかしエースだけが輝くわけにはいけません。少しでも多くの生徒達が活躍できるような授業をしたり、教育研究をしているのではないでしょうか。

学校教育の現場では、生徒一人一人個に応じた対応が求められています。この傾向は今後より強くなるでしょう。それに個に応じることは学級経営の基本でもあります。ひとりひとりを大切にできなければ学級は崩壊します。授業においてもこの事を念頭に置かなければなりません。その他多数に埋もれたり、忘れ去られてしまう生徒がいてはいけません。授業の場でエースの影に埋もれてしまう生徒がいてしまう事態は避けましょう。
ではどのようにすれば、皆が参加できるような授業を作ることができるでしょうか。

そこで強調したいのが「生徒達のノートを見よ」ということです。
ノートは雄弁です。これを書いた生徒達一人一人の個性が如実に表れます。よく考えると生徒達は緻密なノートを書きます。発達段階の遅い生徒達は幼いノートを書きます。乱暴な生徒達は乱暴なノートを書きます。イラストの得意な生徒達は、ノートにオリジナルのキャラクターを登場させたりもします。また発言していなくても、よい意見や気づきを書く生徒もいます。ノートはその子の思考はもちろん、特徴や個性を、時には意外な面を写す鏡です。

ノートを集めたら必ず評価する。(事例あり)

集めたノートは必ず評価をしましょう。渦巻きの丸や「見ました」スタンプ、これもまた生徒達は非常に喜んでくれます。ですが、よりもっと工夫をこらすこともできます。例えば、簡単な得点をつけ、努力したりよいことを書いた子にはそれなりに報いるべきです。

余力があればで大丈夫ですが、他にも、一人一人のノートにポイントをつけて評価するということもいいでしょう。分かりやすいように5ポイントと1ポイントのスタンプを用意し、合格したら5ポイント、さらに努力したりいいことを書いていたらもっと上のポイントというように評価をするのもよいでしょう。時には20ポイント、30ポイントと高得点をつけることもあるのではないでしょうか。そしてポイントがたまったら、ご褒美のシールを生徒達にプレゼントしていました。

またポイントスタンプだけではなく、必要に応じてコメントを書くなどもよいでしょう。特に気になる事を書いている子生徒達にはしっかりとコメントを返すなどしてもよいでしょう。
このように「しっかり先生は見ているんだぞ」というメッセージを出すことが大切です。

そして、これは、と思うノートがあったら、教務手帳に記録するとともに、クラス全体の前で紹介してもよいでしょう。液晶プロジェクターや大型モニターと書画カメラを使い、大写しにします。そしてどこが良かったのか説明します。そうすると、紹介した子のやる気を引き出すと同時に、クラス全体達ノート記述の質を高めることができます。
しかし、場合によってはノートを見られたくないという生徒もいると思います。なのでこういった機会を設ける場合は、事前に生徒に許可をもらうことは必須です。

しかし、綺麗で内容が盛りだくさんだから100点、内容はいいけど文字が汚いから減点ということは決してしてはいけません。表現力が優れている生徒もそうではない生徒もいます。確かに表現力が優れている生徒は、色鉛筆だとか色ペンを上手に使っているか、実験の様子等を分かりやすく書いている、そしてオリジナルのキャラクターを登場させるなど上手にノートを使う生徒もいます。ですが、力量はそれぞれですので、例えば基準を設けて、その基準を上回るメモをとっていたり、授業を真剣に聞いているんだなと感じる節があれば評価を加点するなどそれぞれの力量に応じた評価をとっても良いでしょう。

ともかく子ども達が喜び、やる気を引き出すことが肝心です。

授業が終わったらノートを必ず集める

授業が終わったらその度にノートを集めて目を通しましょう。勿論余力があればで結構です。
単元の終わりにまとめて提出みたいな形でもいいでしょう。しかし、例えあまり書くことがなかった授業でも、何かを書いていることがあります。ノート指導を繰り返していると、授業の内容を超えて自発的にいろいろな事を書く生徒達も出てきます。こまめにノートを集めて見ることは損ではないでしょう!

それでもノートを見ている時間がない時は?

読者の方の中には「とてもそこまでできない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

勿論、業務が多忙なので毎回やることは難しいでしょう。
実際にどうしても難しいという場合は、日記をチェックすることも良いでしょう。

まず、子ども達に家で日記を書いてもらいます。毎週でも、隔週でも、不定期でもいいでしょう。書くノートはクラスで一括して購入してもよいし、生徒達各自が店で選んでもいいです。もしかすると、日記を義務づけている学校もあるかもしれませんね。
ちなみに、日記はたくさん書くことは求めません。自由に記述してもらいます。

ただし、その日記はできるだけ早く生徒達に返却しましょう。
そして、どんなに簡単でも大丈夫です、コメントを書くことが大切です。
こういった事を繰り返していると、担任との間に強い人間関係ができるでしょう。

終わりに

以上、ノート指導と日記についての指導方法を書かせていただきました。
なるべく、授業で使うノートであろうと、日記であろうと、要はできる限り頻繁に集めて評価したりコメントを書いたりすべきです。毎日毎日これを続ける事がいかに大変か想像できると思います。

人によっては、『え、ノート見るだけ?』と思うかもしれません。
しかし自分の授業の板書を生徒達が書いてくれている!中には工夫して書いている生徒もいる!と思うと非常に嬉しくなります。
教員に話しかけることが難しいという生徒も、ノートチェックを通して付箋に質問を書いて提出して、教員がそれに応じて返却する、そのようなことを繰り返すことで勉強が楽しいと感じる生徒も出てくるでしょう。

ノート指導は、教員にとって当たり前の仕事だろう、と考える方もいると思いますが、非常に奥深いのです。
教員にはこのような業務が沢山あります。
当たり前を、もっともっと探求してみてください。

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