2学期の進路面談や保護者も交えた三者面談は子どもの進路決定の大事な場です。同時に教員にとっては1学期から築いてきた子どもと保護者との信頼関係を発揮し、より強固にする場でもあります。今回は、進路面談・三者面談で注意すべきポイントを解説します。
2学期の面談が始まる前に準備するもの
教員には面談に向けて準備するものがたくさんあります。この準備で、面談の成否が決まると言っても過言ではありません。その中でも、必ず用意しておきたい2種類の資料を紹介します。
子どもの成績は細かな部分まで把握しておきましょう
1つ目は定期テストや実力考査を始めとした生徒個人の成績に関する資料です。授業中の様子などクラス担任の教員一人では分からないこともあるので、各教科を指導している教科担当の教員にも聞き取りを行い、それぞれの授業中での様子や通知表成績の判断理由と可能であればテストの現物など進路の可否の判断に繋がる資料を用意します。これらの資料は面談の際に子どもや保護者と読み合わせができるように予めコピーを取っておくと良いです。子どもの成績を客観的に把握する資料があれば、面談の場で話すときに合格の可能性だけではなく進路を実現するために不足している部分の指摘にも説得力が増し、成績を向上させるための方策も考えやすくなります。
成績結果を確認した上で、更に分析することも忘れてはいけません。例えば、「数学が苦手」と同じように答えた子どもでも、他の4科目が90点台で、数学だけ80点の「苦手」と、他の科目は50点で数学は10点の「苦手」は全く程度が異なります。これは「○○が得意」も同様です。更にもう一歩踏み込んで、科目の苦手な範囲や教科ごとのつまづきの理由まで分析できていると、子どもに対して何に力を入れたら良いのかを明確に伝えられます。面談で子どもの得手不得手だけではなく不得手な科目や分野に対しての対処まで伝えるためも、成績の分析は非常に重要となります。
万が一の進路先の用意を忘れない
2つ目は進路先の情報です。前学期から成績が上がった場合は成績上位の高校を、反対に成績が下がったのであれば、志望校のランクを下げることを勧める必要があります。加えて、不合格の場合を考えた第二志望として教員から勧める高校を用意しておきます。
ここで安直に偏差値だけを基準に学校を挙げないようにしましょう。勿論、子どもが学びたいことに進路先の高校が力を入れていることが前提で、目当ての部活があることや豊富な進学・就職実績があるなど高校自体に関することから、バス・電車などを利用した通学の可否なども進路決定の重要な要素となります。可能な限り、子どもの希望が叶うような学校の資料を用意しておきましょう。また、場合によっては推薦入試を受験する作戦に切り替える必要も出てくるでしょう。面談の際に質問されて慌てることがないように、考えられる進路はすべて用意するのが理想です。
2学期の面談で話すべきこと、聞くべきこと
ここからは子どもや保護者から聞くべきこと、教員から話すべきことなど実際の面談の場で行うことを解説します。子どもと保護者が最終決定した進路について満足のいく結果になるかは面談にかかっています。集めた資料を元にして志望校を決定するだけではなく、子どもが望んだ進路を実現するために必要な勉強までを伝えることを忘れずに面談を進めていきましょう。
2学期の個人面談・三者面談の進め方
2学期の面談の主な目的は、子どもの受験プランの策定です。この面談で学校側からは子どもの成績状況や希望する進路についての可否を伝えることになりますので、子どもも保護者も緊張しています。緊張を解すためにもいきなり本題には入らずに最初は子どもや保護者から家庭での様子をうかがい、こちらからも学校での様子を伝えましょう。子どもの受験に向かうモチベーションを上げるためにも、1学期からの成績や授業に向かう姿勢などの変化を伝えしっかり褒めましょう。同時に、悪い変化や現時点で不足している部分があるならば指摘することも忘れてはいけません。その状況を伝えた上で、実際の受験の話に入っていきます。
2学期には成績はある程度出揃っているので教員は合否の可能性も予測しています。その合否の可能性を明確に伝えましょう。成績上位の学校にも合格の可能性が出てきたため上位校へ第一志望を変更する場合もあれば、十分すぎる合格の可能性があっても変更を希望しない子どもや保護者もいます。逆に、成績が下がってしまったが、何が何でも第一志望は変えないという子どももいれば、学力を考慮して出願先のランクを下げる場合も考えられます。子どもと保護者の希望を確認しながら、本当に行きたい学校の順に受験する高校を並べていきます。単に偏差値の高い順に並べるだけにせず、通学時間や部活なども加味して志望順位を決定します。
非情な結果こそ、きちんと伝える
2学期の三者面談では、多くの保護者から進学の可能性について質問を受けます。高校受験のために重要な要素は内申点、常日頃からの成績が非常に重要です。2学期の懇談が実施される時期は、生徒の成績がほとんど出揃い、学校が推薦を与える生徒に関しても何度も会議が開かれています。
残念な結果でも子どもと保護者に伝える必要があります。伝える教員も非常に胸が痛むと思いますが、「内申点が足りない」「推薦はできない」ときちんと伝えましょう。非情な結果を知らないままでは、苦労するのは子どもと保護者です。内申点が大きな比重を占める高校受験において内申点が足りているのか分からないままでは、志望校の再検討さえできません。誤魔化さずに現段階の内申点が第一志望に対してどの程度充足しているのかを伝えないと、教員から提示した受験プランが全く説得力のないものになってしまいます。
納得のいく進路を実現するために大切なこと
子どもの進路に真剣なのは教員だけではありません。本人は勿論、保護者も真剣です。ただ、どれだけ真剣に挑んでも、どれだけ努力したとしても受験はすべての人が満足する結果にはなりません。それでも、納得のいく進路を実現してもらうためにも、教員が懇談の中でできることは多々あります。ここからは、より納得できる面談のために必要なことをお伝えします。
説き伏せるようなことはしない
多くの教員は成績が厳しい子どもには学力を考慮した出願先を、成績優秀な子どもには上位の高校への進学を勧めます。しかし、どちらの場合も進学するのは子ども自身なので志望校の変更を促してはいけません。教員はそれを応援する立場に立つことが重要です。
個人面談の場合は、子ども一人で大人である教員と応対することになるので、どれだけ客観的な資料があったとしても、子どもの側には「とにかく変更を指示された」という印象しか残りません。教員側からは「成績が厳しい。それなら、○○高校はどうだろうか?」という提案に留めておきましょう。特に、第一志望の変更を提案した場合は、すぐ結論を出すのは子どもも保護者も難しいので、強引に結論を急がず回答期限を伝えて面談を進めるようにしましょう。
逆転の目があるうちはあきらめない
2学期の面談の際には通知表や内申点に関する成績はほとんど出ています。なかには、合格するには成績が厳しい子どももいます。しかしこちらは、あくまでも仮決定の成績であり、進学先に送られる成績ではありません。つまり、2学期の期末試験などで逆転する可能性がゼロではないので、最終決定まで応援し続けることが大切です。同じ通知表の数字が「4」だったとしても、限りなく「5」に近いということもありえます。個人面談では2学期の期末試験の目標を一層シビアに考え、「目標に届けば第一志望に出願可能」と言える目標を作りましょう。
目先の目標が決まれば、成績分析した結果から生徒の弱点の克服と長所の補強に、何をするのかの勉強プランを組み立てましょう。場合によっては、個別課題が必要になることもありえますので、事前に成績に関する相談をしたときに教科担当の先生から課題を出して貰えないか相談しておきます。反対に、限りなく「3」に近い「4」という可能性もあります。この後の結果次第で危うくなる場合も同様に、突破しなければならない目標を数字として提示することが重要です。また、これらの目標や勉強プランは三者面談で保護者とも共有し、家庭での勉強管理に役立てて貰えるようにしましょう。
学校の代表であることを忘れないで!子供のやる気を引き出す面談にしよう
ここまで、中学生の2学期の面談について説明してきました。進路面談・三者面談は子どもの進路を決める重要な場です。子どもや保護者のいう希望を肯定するばかりではなく、不足している部分を明確に指摘し、進路を検討する面談にしましょう。
子どもと保護者の前に立つのは担任の教員ですが、学校を代表して向かい合っているという認識を忘れないことが大切です。シビアに向き合いつつも、最後は教員から「学校全体」が子どもの進路を応援していることを伝え、子どもが志望校に向かってより奮起できる形で個人面談・三者面談は終えるようにしましょう。