養護教諭の宿泊行事における準備や注意点を解説

修学旅行に林間学校、サマースクールにスキー実習など、学校によって呼び名は様々ですが、どの学校にも宿泊行事と呼ばれるものがあります。
宿泊行事は学習指導要領の中に位置付けられているもので、どの学校でも行われています。
子どもたちのけがや病気の対応のため、養護教諭の引率を求められることが多くなる行事です。
今回は、養護教諭が宿泊行事に引率する際の準備や注意点を解説します。

養護教諭が引率すべき宿泊行事とは

実は、養護教諭が宿泊行事に引率しなくてはならないという決まりはありません。
しかし、多くの学校では養護教諭の引率が求められており、どの宿泊行事の引率を行うかは学校や自治体によって異なります。

例えば修学旅行のような一部の学年だけ行われる行事は、看護師が同行する場合もあります。
養護教諭は学校に残り、保健室で他学年の子どもたちの対応をします。
スキー実習等のけが人が多く出ることが予想される宿泊行事には、養護教諭と看護師両方とも同行するという場合もあります。

養護教諭は子どもたちの普段の様子を知っているので、緊急時の対応が比較的スムーズです。
また体の対応だけではなく、心のケアが必要となる場面もあります。
多くの学校では宿泊行事の際、養護教諭の引率が求められています。

保健室の先生の事前準備

養護教諭が宿泊行事に引率をする場合だけでなく、引率をしない場合でも事前準備は必須です。
主に救急バックを用意し、事前指導を行う必要があります。
特に事前指導は子どもたちが、より健康的に宿泊行事を行うためにとても重要です。

持ち物

宿泊行事において必要な持ち物は次の通りです。

  • 救急バッグ
  • 生理用品
  • ゴミ袋(黒い袋)
  • 緊急連絡カード
  • アルコール消毒液

救急バッグの中身は、宿泊行事の種類によって異なります。
実習の多い行事の場合、けが人が多く出ることが予想されますので、ガーゼや包帯等の外科処置用具が多く必要です。

また宿泊行事中は検温する機会も増えます。
すぐに結果が分かるように、短時間で測定できる体温計があると良いです。

ゴミ袋は血の付いたガーゼや吐物等を捨てるときに必要となりますので、中身の見えない黒い袋にしましょう。

緊急連絡カードは学校によって形式が違いますが、保護者の連絡先や保険証のコピー等が貼り付けてあるものです。
緊急で受診する場合に必要となります。
保険証のコピーは使えない病院も多いので、緊急連絡先の一覧だけ持っていく場合もあります。

その他タオルや瞬間冷却パック、経口補水液等、行事の内容や実施時期に合わせて持ち物をそろえましょう。

事前指導

子どもたちが健康的に宿泊行事を行うため、事前に指導を行う機会を設ける場合があります。
主な指導内容は次の通りです。

  • 生活習慣について
  • 服薬ついて
  • 月経について

生活習慣について

宿泊行事中だけではなく、行事の前から生活習慣を整えるよう指導を行います。
睡眠時間を整える、食事を3食とる、排便の習慣をつける等を伝えます。

服薬について

宿泊行事では酔い止め等、ふだん薬を飲まない子どもたちが薬を飲む場面が出てきます。
持病の薬を含め、自分で薬の管理ができるよう保護者と練習するよう伝えます。
また、薬を友達同士で譲渡しない等の指導も必要です。

月経について

性教育も兼ねて、月経指導を行う場合があります。
ナプキンを必ず持参することを伝え、ナプキンの使用方法を指導をします。
もし月経が重なりそうな場合は、シーツが汚れないようタオルを持参し、生理痛が重たい人は痛み止めの持参も伝えなければなりません。

月経指導は男子のいない場面で、女子だけ行う場合もありますが、男子にも月経の仕組みを知ってもらうため男女一緒に指導を行う場合もあります。
しかしナプキンの具体的な使用方法等は、男子がいない方が安心して聞けるかもしれません。

宿泊行事での病気やけがの対応

テーマパーク散策や見学がメインとなる宿泊行事では、けが人や病人は少ない傾向です。
しかし、実習を伴う宿泊行事の場合、けが人や病人が多くなりがちです。
移動中、宿泊先、活動中、それぞれの場合で起こりやすい、けがや病気の対応をまとめました。

移動中の場合

乗り物酔いへの対応が圧倒的に多くなります。
乗車前に酔い止めを服用するよう、注意喚起を行わなければなりません。
新幹線には多目的室という横になれるスペースがあるので、必要があれば乗務員に相談しましょう。

また宿泊行事への不安を訴える子どももいます。
子どもたちが安心して行事に参加できるよう声かけを行いましょう。

宿泊先の場合

病人への対応が多くなります。
疲れにより発熱してしまったり、頭痛や腹痛などの体調不良を訴えたりする子どもがいます。
感染症の可能性がある場合は、他の子どもたちと部屋を分け、経過を観察しましょう。

そして宿泊先でけがをしてしまう場合もあります。
子どもたちのテンションが上がってしまい、普段起こらないようなけがが起こることもあるので注意が必要です。

いずれも症状がひどい場合は近くの病院へ受診し、場合によっては保護者のお迎えをお願いしましょう。

活動中の場合

けが人、病人共に出る可能性があります。
子どもたちの状態を確認し、場合によっては受診や早退を検討しましょう。
すぐに回復しそうな場合は、本部や救護室で休憩させます。

養護教諭が行っている感染症対策

宿泊行事中は疲れもたまりやすく、感染症を発症するリスクが高まります。
最近では感染症対策のため、宿泊行事の2週間ほど前から体温を記録する学校も多いです。
自分の普段の体温を知ることで、身体の異変にすぐ気づく力を育てましょう。

またマスクや消毒液を多めに持参し、手洗いやうがい、規則正しい生活習慣の呼びかけ等、基本的な感染症対策を徹底するよう声掛けを行います。

養護教諭のアレルギーへの対応

原因となるアレルギー物質を摂取させず、万が一摂取してしまい症状が出た場合は早急な対応が大切です。

宿泊行事の前に、子どもたちのアレルギー情報を把握します。
情報は一覧にして業者に伝え、除去食や羽毛以外の寝具を用意してもらう等の対応をお願いします。
万が一アレルギー症状が起こった場合は、どのような対応を行うのか保護者との確認が必要です。
薬やエピペンが処方されている子どもは、行事中の保管場所を保護者と相談し、引率教員で共有します。

養護教諭が行う持病のある子どもたちへの対応

子どもたちの持病の情報は引率教員で共有しておく必要があります。
アレルギーだけでなく、喘息や心臓の病気等、緊急時にどのような対応を行うか、保護者との確認が必要です。
学校によっては持病がある子どもたちの一覧を、引率する先生に配布することもありますが、個人情報のため取り扱いには十分注意しましょう。

安心して楽しめる宿泊行事にするために

宿泊行事は子どもたちが学校行事の中で、とても楽しみにしている行事です。
学校生活の中でも大きな思い出となることでしょう。

小学校の場合は、初めての宿泊行事ということで不安を抱える保護者の方も多いです。
持病やアレルギーの対応を事前にしっかりと確認し、情報共有を行いましょう。
子どもたちだけでなく保護者や先生たちも、安心して行える宿泊行事にしましょう。

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