学校現場において、教員の業務過多が深刻な問題となっています。
教員は、勉強を教えるだけでよいわけでなく、子どもから提出されたノートの点検、テストの作成や印刷、通知表の作成などいわゆる「事務作業」があります。このたくさんの事務作業が多忙化の大きな要因です。デジタル化が推進されたことによって、多少は業務の軽減が行われた部分はあるものの、依然として教員の時間の多くを奪っています。
現在進行形で学校全体でも効率化に努めてはいますが、教員自身も仕事の効率化をしなければ勤務時間を短縮することはできないのが現状です。
教員の仕事は、やろうと思えば子どものためにいくらでも出てきます。しかし、どこかで歯止めをかけないと教員自身が心身のバランスを崩すことにもつながってしまうのです。教員自身が笑顔で働き続けるためには業務の効率化はかかせません。今回は、特に時間のかかるノートの確認やテストの丸つけを効率化するためのアイデアを長年教育現場で活躍しているベテラン教員が紹介していきます。
ライター
emikyon
・元公立学校教員
・教育委員会にて勤務
・eduloライター歴2年
点検するものによって「目的意識をもった確認」をしよう
はじめに、これから紹介する5つのポイント全てに共通することとして、業務を行う際のゴール(目的)を明確にすることが重要です。ゴールがないと、どこまでもこだわることができてしまい、時間がいくらあっても足りません。「確認」なのか「価値づけ」なのか、業務の意味合いを考え、目的を決めて取りかかりましょう。
①習熟度を確認するための問題をピックアップ
「授業のノートや宿題を見るときには何を考えてやっていますか?」こんな質問をすると「やっているかどうかを見る」「出しているかどうか確認する」そんな答えをする教員もいます。しかし、それでは点検や確認をする意味がありません。出しているかを確認するだけであれば、「点検係」を作って、子どもにやってもらえばよいです。問題を全部見ることに時間を使うのではなく、子どもの習熟度を確認し、状況によって補充や追加学習を考えることを優先しましょう。
問題数が多い場合には、子どもが間違えそうな問題、引っかかりそうだという問題をいくつかピックアップしておき、その問題ができているのか確認します。これならば全員分見るのにそこまで時間はかかりませんよね。
②簡単に業務効率化できる2つのアイテム
「確認するだけでは子どもの意欲を引き出せない」と考える人もいるのではないでしょうか。子どもに宿題や授業のノートを意欲的かつ、主体的に取り組ませるためには、ちょっとした工夫が必要です。定番なアイテムですが「シール」や「ハンコ」がおすすめですよ。読者の中にも、子ども時代に先生からのシールやハンコが欲しくて課題を頑張ったという人もいるのではないでしょうか。
デジタル化が進んだ現代においてもシールやハンコといった小道具は非常に有効です。特に小学校の低学年から中学年にかけては大きな効果を発揮します。
「シール」や「ハンコ」の活用方法
2つの道具を「ただ使っている」だけでは、あまり意味がありません。「確認」の道具として利用するだけでなく「価値づけ」の道具として活用しましょう。
例えば、課題が1つの間違いもなく丁寧にできているならば、「たいへんよくできました」のハンコを押しましょう。少し間違っているなら「よくできました」のハンコを押します。
本を読み、自分の経験を合わせて書くことができていたから「金シール」を貼りましょう。本の感想だけになっているから「赤シール」を貼ります。
このような方法を使うことにより、「たいへんよくできました」のハンコをもらえた子どもは「やりがい」を感じて努力を続け、「よくできました」のハンコだった子どもも考え、工夫をするようになります。
「シール」や「ハンコ」はやってあることを確認するのに手軽な手段ですが、意味もなく使うのは教員側にとっても子どもにとってもメリットがありません。
③「問いかけ」を上手に利用したコメント
宿題の日記に対するコメントなども経験者の少ない教員にとっては難しいものと感じるのではないでしょうか。日記や授業の内容に関する教員側の感想は、基本的に公表されることはありません。宿題を頑張った生徒に対して、たくさんコメントしてあげたいと思う気持ちも分かりますが、メリハリを付けなければ点検に非常に時間がかかってしまいます。実は、1つのポイントだけで時間をかけず、上手にコメントができるようになります。そのポイントは、「問いかけ」を使うことです。特に文章を書くことが苦手な子には、教員から質問するのも良い方法ですよ。
子どもたち全員に長めのコメントをすると、他のことが手につかなくなってしまうので、
・今日は男子には少し長めのコメントをする
・出席番号の偶数と奇数の子でコメントの長さを隔日にする
など、子どもへの時間を数日単位で均等化することで業務を改善することができます。
公開されるコメントは内容には特に注意しよう
教室掲示のように公開されるものに対するコメントには特に注意が必要です。公開されるもののコメント量は、見て分かってしまうので子どもだけでなく、保護者からも指摘される可能性があります。
このような場合には、時間に余裕を持って早めに作り始めること、コメントの内容をある程度考え「最初の1文目は教員の感想、2文目は励ましの言葉」というようにパターン化しておくとコメントを書くスピードが早くなります。すこしずるいかもしれませんが、先輩の教員の掲示物を見に行っていくつかコメントのサンプルを自分で作っておくと楽になりますよ。(同じ技は背面黒板の教員からのメッセージを作るときにも使うことができます。)
④ノートを2冊用意して交互に利用
ノート確認は時間の勝負。確認時間を多く確保するために、ノートを2冊用意して、交互に提出してもらう方法もあります。2冊も購入するのはもったいないと思う人もいるかもしれませんが、実際に1年間授業をやっているとノート1冊で1年間を終えることができる教科の方が少ないのではないでしょうか。
最初は学年費でノートを購入し、その後は、なくなったら個人でノートを買いに行く制度を取っている学校が多いと思います。それならば、最初から2冊購入しておき、交互に提出をしてもらう。すると子どもが帰った後でノートの点検をすることができます。
2冊購入することが難しいのであれば、宿題を交互(例えば、漢字と計算)に出していくのも1つの方法です。事務作業の業務効率を上げるためにも「教員の意図的な工夫」をしていくことも大切です。
忙しい中でノート点検する時間を作るのはベテランでも難しい
さまざまな業務のある教員にとって、ノートや宿題の点検時間を確保するというのはベテランでも難しいところがあります。その理由は、こだわればいくらでもこだわることができ、子どものためを思っていくらでも時間を使ってしまうためです。しかし、これでは業務改善にはなりません。まずは、事務作業の目的をしっかりともって、ゴールを定めてから仕事にあたるようにしましょう。ゴールについては、学年間や教科間でずれがないように横で相談し、統一しておくことも、子どもや保護者から不平・不満を言われないようにするポイントです。
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