子どもの頃から教師になることに憧れをもっていたものの、一般の企業に就職。しかし、一旦諦めた夢をあきらめきれず、やっぱり教師になりたいと考える人もいます。社会人から改めて教師を目指すことは可能なのでしょうか。
この記事ではそんな疑問に答えていきます。
社会人から教員になるために
教員になるためには、新卒・社会人関係なく、以下の2つの条件を満たしていれば誰でもなることができます。
- 自治体が設けている年齢制限以下であること
- 教員免許を取得していること
詳しく解説していきます。
①自治体が設けている年齢制限以下であること
全国68の自治体の中で、年齢制限を設けている自治体は27です。年齢制限の幅もおおよそ50歳前後に設定されています。
民間企業から教員に転職する人に関しては年齢制限の緩和措置を講じている自治体がほとんどですので、年齢については気にする必要はほとんどありません。
文部科学省が出している「教師の採用等の改善に係る取組事例」には、自治体ごとにどのような年齢制限を設けているのかなど詳細が記載されていますので、自身が教員になろうと思っている自治体について一度確認しておくとよいでしょう。
◆参考
文部科学省
∟教師の採用等の改善に係る取組事例
∟5 受験年齢制限、情報公開・不正防止のための措置
②教員免許を取得していること
教員を目指す上で一番大変なのが教員免許の取得です。
これから取得しようという方はおおよそ2年半~4年間の学習期間を経て、教員免許を取得しなければなりません。教員を目指すには、教員免許を取るために長期間勉強する覚悟と忍耐が必要であることを認識しましょう。
また、平成21年4月1日から教員免許更新制が導入されたことにより、すでに免許を取得している方でも有効期間が切れてしまっている場合は、失効となっています。そのため更新の手続きと講習の受講が必要となります。教員になろうと思った時点で有効期間を確認しておきましょう。
教員になるために必要な資格
繰り返しになりますが、教員になるためには「教員免許」が必要です。
教員免許(正式名称:教育職員免許状)には「普通免許状」「特別免許状」「臨時免許状」の3種類があります。
普通免許状
普通免許状は専修、第一種、第二種の3つに分かれます。
また、幼稚園、小学校、中学校、高校、特別支援学校ごとに以下のように分かれます。
幼稚園 | 幼稚園教諭一種免許状 |
幼稚園教諭二種免許状 | |
幼稚園教諭専修免許状 | |
小学校 | 小学校教諭一種免許状 |
小学校教諭二種免許状 | |
小学校教諭専修免許状 | |
中学校 | 中学校教諭一種免許状(教科) |
中学校教諭二種免許状(教科) | |
中学校教諭専修免許状(教科) | |
高等学校 | 高等学校教諭一種免許状(教科) |
高等学校教諭専修免許状(教科) | |
特別支援学校 | 特別支援学校一種免許状 |
特別支援学校二種免許状 | |
特別支援学校専修免許状 |
※免許の種類と取得できる学校
◆専修:大学院卒業
◆一種:大学卒業
◆二種:短大または専門学校の卒業
特別免許状
担当する教科において専門的な知識や経験を有する人が各都道府県の教育委員会から推薦を受け、教員職員検定を合格することで授与される免許状です。
普通免許状を持っていなくても先生になれることが特徴ですが、多くの人は社会人を経験して専門性を極めた結果として授与されています。
臨時免許状
教育職員検定の合格が必要です。
臨時免許状は、普通免許状を持っている教員が採用できない場合に「臨時」に与えられる免許状です。
美術や音楽などの芸術系の教科では、普通免許状を持っている教員が少ない地域があるため臨時免許状が発行されることもあります。
社会人を経験していると「特別免許状」を授与されることもありますが、これはごく稀のことですので、これから教員に転職したいと考えるのであれば普通免許状の取得を目指しましょう。
働きながら必要な単位を取得する方法
普通免許を取得するには、一般的には専門学校や大学などに入学して必要な単位を取得する必要があります。
今の仕事を辞めて入学し直す人もいますが、これから教員を目指したい人の多くは「今の仕事を続けながら教員免許を取得する方法はないのか?」と考えているのではないでしょうか。
結論、仕事をしながら教員免許を取得する方法はあります。それが「通信制の大学」に入学することです。
通信制の大学であれば「自主学習」が主体ですので、仕事終わりやスキマ時間での学習が可能です。そのため仕事を続けながら教員免許取得を目指す方には、通信制の大学に入学することをおすすめします。
教員免許が取得できる大学について、文部科学省のホームページに掲載されています。通学過程、通信課程それぞれまとめられていますので、そちらを確認して自分に合う取得方法を選択してください。
小学校の教員免許が取得できる大学
文部科学省サイト内
∟教員免許状を取得可能な大学等
∟平成31年4月1日現在の教員免許状を取得できる大学
∟2.小学校教員の免許資格を取得することのできる大学
中・高校の教員免許状が取得できる大学
文部科学省サイト内
∟教員免許状を取得可能な大学等
∟平成31年4月1日現在の教員免許状を取得できる大学
∟例:A 国語・書道 ※各教科別
通信制の大学について
今回は通信制大学の中でも人気のある佛教大学通信教育課程を例に説明していきます。
授業料
なりたい教員の種類によって授業料は変わりますが、おおよそ75万円~85万円です。
入学時の費用として約25万円、学習が進むと実習を受ける必要がありますので、その費用として約55万円前後かかります。
勉強期間
最短で2年での教員免許取得が可能ですが、一般的には年3年~4年、どれだけ早くとも2年半は覚悟しておく必要があります。必要な単位の数によっても勉強期間は大きく変わってきます。1単位あたり約25時間前後の学習が必要と言われています。
例えば、幼稚園二種(短大卒レベル)の教員免許取得を目指すのであれば必要な単位は42単位です。一方で、高校一種の地歴公の教員免許を取得するのであれば102単位必要ですので、単純計算で幼稚園二種の2倍以上時間がかかります。
上記の例ですと、幼稚園の先生になるためには約1,050時間、毎日休まず2時間勉強すれば525日で必要な単位の取得が可能です。
そして高校の地歴公の先生になるには約2,550時間、毎日休まず2時間勉強しても1,275日かかります。
「とにかく早く先生になりたい!」と考えるのであれば、必要な単位数が少ない教員を目指すことも選択肢の一つかと思います。
カリキュラム
通信大学の主なカリキュラムは、大きく分けると3つになります。
①テキスト学習
自ら教材を購入して自主学習を進めます。レポート提出も必要です。
②スクーリング
実際に大学に登校して受ける対面式の授業です。
③教育実習→詳しくはこの記事から
現場に配属され研修を実施します。
学習をすすめる上での注意点
通信制の大学は自宅学習が進められることで仕事と並行して進められるというメリットがある一方で、いくつかの注意点があります。
モチベーションの維持
仕事と並行して自主学習を進めていかなければならないため、時間の確保とモチベーションの維持が必要不可欠です。
大学によっては学習のサポート制度としてWEB面談システムを採用しているところもありますので、そういった制度も利用しながらモチベーションの維持に努めましょう。
教育実習への参加が必須
基本的には自主学習になるので仕事終わりや休日などに学習が進められますが、教育実習となると話は変わります。
教育実習では平日の約2週間~4週間は絶対に現場(学校)にいなければならないので、その期間は仕事のスケジュールをうまく調整しなければいけません。
長期休暇を取得できる会社であれば問題ないかと思いますが、それが難しければ教育実習が始まる時点で退職するしかないでしょう。
教員免許を取得してから採用まで
教員免許が取得できれば、あとは教員の採用試験を受けて見事合格できれば教員として働くことができます。公立学校と私立学校で採用の流れが異なるので注意しましょう。
公立学校
各自治体で実施される教員採用試験を受験し、合格する必要があります。教員採用試験とは都道府県が設置している公立学校の先生になるための試験です。一般的には「筆記」「面接」「実技」「適性検査」の4つの試験に分かれています。
試験に合格すると「教員採用候補者名簿」に名前が登載され、その中から必要に応じて採用がなされます。
受験~赴任の流れは以下の通りです。
・6月~7月 :一次試験
・8月~9月 :二次試験
・9月~10月 :合格発表、採用候補者名簿に登録
・11月~12月:採用の調整
・1月~3月 :赴任する学校の決定
・4月 :赴任
私立学校
公立学校が教員採用試験で統一の採用体系をとっているのに対し、私立の採用は様々なパターンがあります。
私立学校への就職は一般的な民間企業へ就職することと同じですので、就職活動を行う必要があります。面談や学校独自の適性検査を受けながら、私立学校への就職を進めていくことになります。
各学校がどのような採用方法をとっているのか、事前にしっかりと調べましょう。
以下の記事は私立と公立の違いについて、基本的なことから採用の流れも含めて書いてあるので、よかったら読んでみてくださいね。
時間と費用がかかるため覚悟が必要
社会人から教員になることは、決して不可能なことではありませんが、一方でかなりの費用と時間がかかります。
しっかり覚悟を持って教員を目指してください。