中学・高校の教員を目指す方にとって、部活動は負担として捉えている方も多いでしょう。自身が触れたことのある分野の部であればその経験から指導することが可能ですが、全くの未経験或いは専門外の部活動顧問を任されることは中高教員にとってよくあることです。また、部活動は教員のサービス残業や休日出勤の上で成り立ち、教員の時間と体力を奪うマイナス面の多い活動であった過去があります。近年では教員の働き方改革によって大分負担は軽減されていますが、やはり専門外分野の部活動顧問になるとその精神的負担は大きいことは間違いありません。当記事では、中高教員が一度は経験するであろう専門外の部活動顧問になった時にしておいた方が良いことを3つご紹介します。
部活動の位置づけ
そもそも部活動とは何のために存在するのかご存知ですか?学習指導要領では部活動を「学校教育の一環」としており、教育的価値のあるものという位置づけをしています。また、「生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動」と明記されています。すなわち、部活動は子どもが主体となって行う学校教育活動というわけです。学校教育における教育課程は、「教科活動」と体育祭や文化祭などの「特別活動」に分けられますが、部活動はどちらにも属さない「課外活動」となります。 あくまでも自主的な活動となるため、通常の授業時間の他に活動時間が設けられているのです。
どんな部活動でも目的や目標に向かって、子ども達が主体となって行う部活動は心の成長につながるものです。さらに運動部であれば基礎的な体力向上も期待できます。カリキュラムの組まれている教育課程と違って、部活動は自らが選んで参加することのできる活動です。教育活動でやりがいを得られない子どもも、部活動で学校の存在価値を感じられることもあるかもしれません。その上、部活動が子ども達の視野を広げ、将来への希望を見出す場となるかもしれません。そう考えると部活動の役割は非常に大きいものと言えるのではないでしょうか。
参考文献:スポーツ庁、運動部活動の意義・位置づけ
部活動顧問の役割
部活動は子どもが主体となって行う活動ですが、あくまでも学校教育の一環であり、その活動は教育課程と関連付けられていなくてはいけません。その役割が教員ではないでしょうか。適切な目標設定、人間関係や怪我・体調の管理など全体的な指導が必要なのです。さらに学級、学年の枠を越える部活動は、社会性向上をサポートできるような指導を目指します。リーダーの見定めや部内でのルール決めなどです。
もちろん技術的な指導も顧問の役割です。しかし、昨今では部活動指導員が制度化されました。外部指導者を導入する手段もあるため、顧問教員の技術指導における負担はかなり軽減されています。そこで顧問教員に必要なのが、部活動指導員や外部指導者との綿密なコミュニケーションです。普段の活動における技術的指導は専門の指導員に任せていても、顧問教員も責任を持って指導にあたります。指導者が複数いる場合は、指導員間で連携が大切です。
また、部活顧問の役割として保護者への対応も挙げられます。子ども間でのトラブルが発生した時や、体調不良或いは怪我をした際には、保護者への説明責任があります。部費の調整などもあるでしょう。保護者が安心して子どもを部活動へ参加させられるようにコミュニケーションを取ることが大切です。
自身の専門外の部活動顧問に任命されると不安も大きいですが、先述した通り技術的指導は専門指導員や外部指導者と連携することができます。むしろ技術的指導より、教育課程との関連付けを意識した指導、或いは安全管理や社会性を意識した指導を行うことに注力すべきでしょう。
参考文献:スポーツ庁、部活動指導員について、平成29年4月1日施行学校教育法施行規則
専門外の部活動顧問を任されたらやるべきこと3選
先述のように技術的な指導における負担軽減はあるにせよ、自身が未経験である分野の部活動顧問になった時の不安は非常に大きいものです。そんなとき、下記の3点を意識して指導に当たってみてはいかがでしょうか?
その1:素人であることを隠さない「イチから頑張る」心構え
入部している子どもの中には未経験者もいるはずです。きっと大きな不安と希望を持って参加しているでしょう。顧問教員自身が学ぼうとする姿勢を示すことで、未経験部員が部に馴染みやすい雰囲気を作れるかもしれません。また、未経験の教員は技術的なことに口を出さず、上級生や部長、経験者の部員の意見を聞くなどして子ども主体の活動にします。教員であることや大人であることのプライドよりも、未経験者としてイチから頑張る心構えを大切にするのです。「できる人ができない人へ教える」という社会のプロセスが、部活動内で経験でき、顧問自身がそのお手本になることができます。
その2:子ども達の安全・体調管理と人間関係のサポート
部員一人ひとりの性格や特徴、家庭環境まで把握しておくことが大切です。特に年齢が上がってくると、大人には見えにくい子どもなりの悩みなどがあるからです。家庭や学級とは違った部内での人間関係を顧問が把握し、サポートしていかなくてはいけません。部活動が活力となっている子どももいるため、部活動がいい意味で過ごしやすい場となるように心がけましょう。また、安全と体調の管理も行います。特に運動部は、事故や怪我に注意が必要です。部活動による様々な事故を例にとり、危険な場所での活動禁止や、オーバーワークによる怪我の心配などの知識を指導します。安全に活動できるような環境づくりも顧問教員の役割なのです。
その3:知っておくべきルールの把握
教員の時間と体力を奪われるイメージの強い部活ですが、学校の働き方改革が進んできており、教員の1か月の超過勤務を45時間以内とするガイドラインが設けられました。職員会議や授業・行事準備などの業務、土日の部活動が地域活動へ移行していく流れも考えると、顧問教員が部活動指導する時間は限られます。
教員の主たる業務である授業を疎かにすることなく、教員自身のプライベート時間も大切にするためのルール作りが急速化しているのです。やはり、技術的な指導は部活動指導員や外部指導者が行い、顧問教員はそれ以外のサポートとしての役割が大きいものとなっています。
参考文献:文部科学省、公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン【概要】
ほとんどの中高教員が専門外部活動顧問を経験する
若手教員は運動部に配置されることが多い傾向があります。特に、新任教員はその傾向が強いです。慣れない教員生活に加え、運動部の顧問となると時間と体力の消耗が大きいでしょう。
しかし、中高教員の約半数が未経験運動部の顧問を経験しています。そこで学ぶことや経験値をあげるメリットも多いのです。
少し前までは顧問教員が技術指導など全ての指導を請け負っていましたが、様々なルールや制度が導入されているため、その負担はかなり軽減されています。これからの制度の流れをみても、教員の部活動に対する負担はどんどん少なくなるはずです。ですから、中高教員を目指す上での部活動顧問はマイナスなものと捉えなくていいでしょう。
むしろ、子どもとの触れ合いの場、指導経験を積むための貴重な場としてポジティブなものとして受け止めるべきです。
参考文献:スポーツ庁、資料2運動部活動の現状について、平成29年5月