ICT活用は「主体的な学び」を引き出せるの?(後編)

「最近の子どもたちは主体性がない」「もっと主体的に行動するべき」と多くの教員が口にしますが、この主体性とはいったいどのようなものなのでしょうか。

新しい学習指導要領では、これまで以上に、ICTが大きな役割を果たすと期待されています。授業におけるICTの活用は、子どもの主体性にどのように影響するのでしょうか。

前回に引き続き、Next GIGAへ向け主体性の育成とGIGAについて考えていきたいと思います。

まだ読んでいない方は、ICT活用は「主体的な学び」を引き出せるのか(前編)を先にご覧ください。

ライター

安部慎也先生

・青森県公立中学校に19年勤務

・指導主事を経て、現在は学校現場に復帰

・「独立総合教育政策研究所」の所長を務める

ICTで主体性を引き出す「しかけ」を創ろう!

授業を構想する際には、本時のねらいを達成するための学習問題、学習課題を設定しましょう。一通り指導案が出来上がったとき、真っ先に振り返ってほしい部分があります。それはどの部分だと思いますか。評価場面でしょうか、話し合い活動の場面でしょうか、もちろんこれらの場面が適切に機能しているかどうかを点検することも大切ですが、この学習問題(学習課題)は、本当に子どもたちが『解決したい!』と思う課題設定になっているかを確認することが重要です。学習問題、課題は、子どもたちにとっては押し付けにすぎず、教員主語の授業と言えるでしょう。教室がざわめき、つぶやきが飛び交う中では、子どもたちが解決してみたいと思う「子どもが主語の授業」でなければ、その授業の成功は難しいと言ってもよいです。

このような学習問題や課題づくりが授業のキーとなるわけですが、どのように仕掛けていけばよいでしょう。ここでICTの出番です。子どもたちが解決したくてうずうずするような学習問題や課題が出来上がった時、すでに子どもたちの主体性に火が付いた証となるでしょう。

例えば、倒立前転ができず、さらには自分のどこに原因があるのか分からず、意欲を失っている子どもがいるとします。この子の倒立前転をする様子を、前後左右からタブレットで撮影して本人に見せてみてください。また、他の子どもたちと比較させてみましょう。そうすることで子どもたちの中に、「気付き」が生まれます。授業者側にとって、ICTは子どもの概念を効果的に揺さぶる武器となり、子どもたちに気付きをもたらす必須アイテムとなることでしょう。「あれ、どうしてだろう。」「気になるなあ、調べてみよう。」そのような子どもたちの思いで動き出す瞬間を大切にしたいものです。

授業者の目と耳を補完してくれるICT活用

授業中、教員は子ども一人一人を見取らねばなりません。そして評価へとつなげていくことでしょう。しかしながら、子どもたちの一挙手一投足やちょっとしたつぶやきを細大聞き洩らさず、見逃さずに、30数名の子どもたちを見ることはかなりの至難の業です。

もしもあなたが、子どもたちの調べたことの全体像、思考課程を知りたいと思った際には、どうしますか。あなたが一人一人に聞いて回るのでしょうか。それとも順に発表させますか。どちらも現実的ではありません。しかしながら、一人一台のICT機器でそれぞれがまとめたものを集めることにより短時間で実現できます。

また、振り返りや子どもたちの意見をGoogleフォームのようなアプリケーションで集約すると「反対/賛成」等といった選択式の回答に関して、学級全体の状況、割合をすぐに把握することができ、円滑に見取りが可能になります。このように、ICTは、授業者が全て一人ではできないところや現段階での学級の思考課程を把握する点において、目と耳を補完してくれる役割を期待できます。

Next GIGAに向けて、これから何をすべき?

学校現場へ降りてきた「ITの推進」は、「ICTの推進」へと進化しました。つまり「C(コミュニケーション)」が加わったことは何を意味するのかということを、教員の皆さんは改めて考える必要があるのではないでしょうか。

これからのNEXT GIGAでは、コミュニケーション能力の育成のためにICTを活用する場面を取り入れること、様々な情報を引き出し、集約し、その中から自分にとって有益・必要な情報を取捨選択する力を必要とする授業を創り出すことが、求められます。

私たち教員は、子どもたちの創造的思考力に委ね、任せ、伴走者としての役割に徹し、学びのハンドルは子どもたちにしっかり握らせてあげることが、これからのNEXT GIGAのステージでは必要ではないでしょうか。

さらに、生成AIが学校現場へと入ってきています。これらとどう向き合うのか、AIを逆手に取った授業づくりの事例が今後たくさん出てくるかと思います。教員は絶えずアンテナを高く張り、また自身の自治体だけでなく、全国各地の実践まで広いエリアに張り巡らせながら、教員自身もUPDATEしていくーこれがNEXT GIGAに見える風景と言えるでしょう。

子どもの主体性はICTの活用で伸びる

主体性は本来どの子どもも持っています。熟達した先生方はチョーク1本、そして発問・問答により、子どもたちの主体性を引き出してきたことでしょう。しかし、「だれでも技」ではありません。この変化の激しい時代に、迅速さかつ創造性が求められる時代だからこそ、時間はかかるものの、子どもに自由に試行させ、そのために自由な発想で考えさせることを怠らない教育がますます必要となってくることでしょう。

子どもを中心に、そして子どもが主語の授業が展開されたとき、子どもの主体性の引き出しは開きます。ICTは目的ではありません。ICTを本時の授業のこの場面で導入することで、学習問題や課題に切実感を持たせられるといった、手段であることを今一度再認識し、その必要性や有用性を子どもたちが気付き、感じ取らせるような授業づくりを心がけることが大切ではないでしょうか。

安部先生のご経歴と主な活動

青森県において、公立中学校で理科教員として19年勤務。その後、教育委員会事務局指導課で指導主事を経て、現在は青森市公立中学校の学校現場に復帰。同時に、昨年全国の先生方及び文部科学省、自治体教委の教育長様はじめ、教育有識者の皆様のお力添えを賜り、任意団体として独立総合教育政策研究所を設立しました。全国の教育関係有識者の方による最新の教育動向や若い先生の教育実践などの講演・発表を通した、ディスカッションを週末に行う「学校・教育UPDATE Group」(1月20日時点811名)を企画・運営しております。また、機関誌「学びと教育」を毎月発刊し、最近の教育トピックや教育施策及び諸学力等の調査結果について、所員で分析し、提言を行っております。若い先生方や教育実習へ行かれる先生方が書き込みながら、授業づくりや児童生徒理解に役立つ「せんせいのためのワークシート」を近日頒布予定です。

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