GIGAセカンドステージに突入!活用例や注意点を徹底解説!(後編)

後編の今回は、前回に引き続き、セカンドステージに向けて教員としてどのような意識のチェンジが必要なのかを解説します。

前編はこちらから

ライター

安部慎也先生

・青森県公立中学校に19年勤務

・指導主事を経て、現在は学校現場に復帰

・「独立総合教育政策研究所」の所長を務める

これからのICT教育に不可欠なマインドセット

GIGAスクール構想の動きが始まってから4年目を迎えた今こそ、初心に振り返ってみましょう。全国の子どもたちに配付された一人一台端末ですが、その目的は、多様な生徒を誰一人取り残さない学びや創造性を育む学びの実現や、特別な支援を必要とする生徒の可能性を大きく広げるという所にありました。目的を改めて見返してみると、子どもたちを主語とした一人一台端末の活用を考えていく必要性があることが改めて分かるのではないでしょうか。

NEXT GIGAと言われるこれからの時代においては、一人一台端末をどのように活用して、いかに子どもたち主体の授業デザインを考えていくことができるかどうかという部分が重要になってきます。教員は知識・技能を伝える役割にとらわれるのではなく、子どもたちの学びを引き出すファシリテーターとしての役割など、新たな役目を模索していくことも大切になってきます。つまり、これまでの経験や学びの経験値を一度捨て新たに学び直す、いわゆる「アンラーニング」の姿勢や学び続ける姿勢がこれからのICT教育を行うに当たって必要なマインドなのではないのでしょうか。

文房具として使う一人一台端末と活用例

文房具として一人一台端末の活用するためには、教員主語の授業づくりから子ども主語の授業づくりへ転換を図っていくことがポイントになります。

皆さんは、「保管庫からタブレットを取ってきてください。」「これからタブレットを使うので、机の上に出してください。」という指示を子どもたちにしてはいないでしょうか。

子ども主体の授業づくりにしていくには、子ども自身が好きな時に好きなタイミングで一人一台端末を活用できる環境を整えるとともに、活用の仕方を子どもたちに委ねるという姿勢が大切になります。

では、実際に一人一台端末を文房具として活用するにはどうしたらよいのでしょうか。ここでは2つの例を示していきたいと思います。

1つ目の例は、皆さんの学校の生徒の中には忘れ物をよくしたり、家庭学習などのスケジュールをうまく立てられなかったりする子どもはいませんか。一人一台端末の中には、リマインダー機能やカレンダー機能、メモリストをつくる機能があるものがあります。例えば、忘れ物をしないようにリマインダー機能で通知がくるように設定をしたり、視覚的に自分のスケジュールを把握できるようカレンダー機能の中に自分の予定を記載したりといった活用の仕方が考えられるでしょう。活用方法を生徒に伝えることにより、生徒の自律や自律的な学びへと繋がっていくことが考えられます。

次に、一人一台端末は自律的に学びの復習をする文房具としての活用ができます。皆さんは、生徒が学習の復習の段階で困っている時に「自分が教えないといけない」と感じてしまうのではないでしょうか。

昨今、YouTubeや各種アプリでは数多くの授業動画を閲覧することができ、しかも短時間で分かりやすい構成で作成がされています。わからない問題がある時に、教員の教えをもっているだけでは、それは受け身的な学びと言えるでしょう。授業の中や家での復習の中でもう一度ポイントを確認したい時に、このような授業動画を子どもたち自ら文房具として活用することが、生徒主体の学びにも繋がっていくのです。2つの例を示してお気付きの方もいるかもしれませんが、文房具として一人一台端末を生徒が活用していくには、端末の持ち帰りをして学校だけではなく家庭での活用も推進していくことも大切なポイントと言えるでしょう。

自由試行できる一人一台端末と活用例

自由に試行できる一人一台端末の活用を図っていくには、教員のマインドと環境を整えることがポイントになります。皆さんは新しいことを教える際に、子どもに教えられる準備が十分できるまで第一歩を踏み出さないで待っているのではないでしょうか。

端末の活用に当たっては子どもたちと同じ視点に立ち、共に自由に試行をしながら活用の仕方を探究していくことが大切です。環境の整備という点では、子どもがいつでも好きなタイミングで色々なアプリに触れる事ができるようにしておくことがよいのではないでしょうか。

例えば、Googleサイト等で学習ポータルサイトを作成し、その中に各種アプリへ繋がる入り口をURLを用いて整備していくことで、生徒たちは自由に色々なアプリに触れることができ、体験をしながらそれぞれのアプリの特徴や活用の仕方を試行錯誤していくことができます。

では、このように教員のマインドと環境を整えた上で、自由に試行できる端末の活用とはどのようにしていけばよいのでしょうか。ここでは2つの例を示していきたいと思います。

一つ目は、国語や社会の学習等において自身の問いや学習課題について調べたことを生徒たちにまとめさせる際のポイントです。ここでは、使用するアプリ・ソフトを教員で設定するのではなく、子どもたち自身に選択させることが大切です。まとめるということはそれを伝える相手がいるということなので、生徒自身にアプリ・ソフトを選択させることにより、時と場合に応じたアプリ・ソフトを使い分ける力や、それぞれのアプリ・ソフトの特性を考えた活用力を伸ばしていくことができるのではないでしょうか。

2つ目は、前述した例と類似したものとなりますが、一人一台端末の活用の中で、思考ツール(シンキングツール)を用いた授業の際のポイントです。皆さんは思考ツール(シンキングツール)を子どもにどのように提示していくでしょうか。

これも一つ目の例と同じように、子ども自身にどの思考ツール(シンキングツール)を活用していくかを選択させていくことが大切になります。もちろん、それぞれの思考ツール(シンキングツール)の活用の仕方や特性については指導が必要であるでしょう。最終的には、既存の思考ツール(シンキングツール)だけでなく、自身で考えたツールも用いて情報を整理することが望ましいと考えます。2つの例を挙げさせていただきましたが、一人一台端末を生徒に自由に試行させて活用させていくことは、子どもたちの学びの自律・生徒主体の授業づくりにも繋がっていくのではないでしょうか。

ITからICTへ

IT教育 (Information Technology Education)は、コンピューターのハードウェアやソフトウェアの基本的な知識を教えることを指します。具体的には、プログラミング言語の学習やハードウェアの構成、ネットワークの基本知識などが含まれます。つまり、IT教育は、コンピューターそのものに焦点を当てた教育です。その一方で、ICT教育 (Information and Communication Technology Education)は、情報通信技術を活用した教育的アプローチを指します。これにはコンピューターだけでなく、インターネットやデジタルデバイスも含まれます。ICT教育は、情報を収集・処理・共有するスキルを教えることを重視しています。特質すべき具体的な例として、インターネットを活用した情報収集やデジタルツールを使ったコミュニケーションが挙げられます。この両者の違いをぜひ意識してください。簡潔に言えば、IT教育はコンピューターそのものに焦点を当て、ICT教育は情報通信技術を活用した幅広いスキルを教えるアプローチです。どちらも子どもたちが未来で活躍するために重要な要素であり、バランスよく取り入れることが求められています。

世界と教室がつながった!

一人一台端末の配布により、旅行鞄もいらずに自席にいながら、他国の生徒と交流したり、ディスカッションしたりすることができる学びの環境が整いました。まさに未知との遭遇が教室という環境で実現可能となったと言っても過言ではないでしょう。環境が整ったあとは、教員の意識次第です。他国とは言わずとも、他の都道府県へGoogleマップを使ってバーチャル旅行をしたり、また他校とGoogleミートなどビデオアプリケーションでつながることで、例えば、道徳の授業を同時に行ったり、給食の時間に互いにGoogleミートでつながるだけでも、食の違いなどについてつながることが可能です。特に、道徳の授業では、いつものクラスメイトの中の考えや議論に終始せず、多種多様な意見に触れることも可能であったり、互いの郷土教材で授業を行うことも、伝統・文化について深い学びに誘導する一助となることでしょう。

コミュニケーション能力育成のために

ICT教育の推進は、子どものコミュニケーション能力に多くの影響を及ぼしました。具体的な例として、学習時間の最適化が挙げられます。一人一台端末を手にした子どもたちは自分のペースで学習できるため、効率的に学習時間を活用できるようになりました。さらに、ICT教材を個別に活用することで、知識や理解の定着がより効率的に図られることでしょう。この時、わからない問題や課題について、教員は個別指導を合わせて行うことが可能です。また、教育のアクセシビリティ向上もその一つです。ICTを使った教材は、障がいを持つ生徒にもアクセスしやすくなりました。障がいの内容、段階に応じた教材を用意することで、バリアフリーな学習環境を提供できます。このように、インターネットやデジタルツールを通じて、まず子ども同士や教員とのコミュニケーションが増加します。情報共有や協働作業を通じて、コミュニケーションスキルが向上していくのです。

学力としての情報活用能力

情報活用能力というと、多くの教員はインターネットの安全な使い方やモラルなどを主とした情報リテラシーを意味するものであると捉えていないでしょうか。そこで、OECD(経済開発協力機構)が出した「学びの羅針盤(Learning Compass 2030)」では、生徒が2030年以降も活躍するために必要なコンピテンシー(資質・能力)の種類に関する幅広いビジョンを提供しています。これを参考に、情報活用能力とは何か、どのような力なのか、考えてみました。具体的には、情報活用能力は以下のような学力を示すと言えるのではないでしょうか。

1. 情報収集と選別

適切な情報源を選び、信頼性のある情報を収集するスキルが求められます。インターネットや図書館などから情報を探し、必要な情報を見極める能力が必要です。

2. 情報の整理と分析

収集した情報を整理し、必要な部分を抽出するスキルが重要です。情報を比較・分析して、問題解決や意思決定に活用できるようにします。

3. 情報共有とコミュニケーション

他人と情報を共有し、意見交換や協力をする能力が求められます。プレゼンテーションや報告書作成などで、情報を効果的に伝えるスキルが必要です。

4. 情報技術の活用

デジタルツールやデータベースを使って情報を処理し、有効活用する能力が必要です。インターネット検索やデータ分析など、情報技術を駆使して問題解決に取り組みます。

総じて、情報活用能力は、現代社会で必要不可欠なスキルであり、学習者が主体的に情報を活用できる力を育むことが求められているのです。これからのセカンドGIGAにおいては、教員はこれらに解釈できる情報活用能力を育成していくことが核となります。

キーワードは「子どもの創造的思考力」

GIGAとは、「Global and Innovation Gateway for All」の略であり、すべての児童・生徒にグローバルで革新的な扉を開くことを目的としています。この背景には、日本のICT教育の遅れがあります。

OECDの調査によると、日本は学校でのICT機器の使用時間が最下位であり、学校外での利用はOECD平均以上ですが、その多くがチャットやゲームに偏っているという結果が出ています。このような状況を改善し、時代の変化に適応できる創造性や論理的思考力、情報活用能力を育成することが必要不可欠な時代、つまり、GIGAセカンドステージでは重々意識すべきことではないでしょうか。学びにおける時間や距離の制約を取り払い、遠隔・オンライン教育の実施が可能になりました。また、個別に最適で効果的な学びや支援が行えるようになり、PBL(プロジェクト型学習)を通じて身近な地域や世の中の出来事から課題に気づき、解決していくための解決方略(プロジェクト)を、ゼロから生み出す創造性を育むことも期待され、そのための「武器」となること間違えなしです。

しかし、GIGAスクール構想にはまだ解決すべき課題が残っています。例えば、教員のICT活用能力の向上や、ICT支援員の配置、デジタル教科書の普及促進など、ハードウェアの整備だけでなく、ソフトウェア面や人材面での取り組みが必要です。これらの課題に対処することで、GIGAスクール構想はさらに発展し、日本の教育が世界に冠たるデジタル学習基盤となることが期待されています。

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